教育方法学研究
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原著論文
プランゲの学校論における反省的学習(reflexives Lernen)
― 生活との差異に基づく学校教授構想の展開 ―
田中 怜
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2017 年 42 巻 p. 23-33

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抄録

 学校での学習が生活実践と結び付かない,いわゆる学校と生活との乖離の問題は,20世紀初頭の改革教育学から現代の学校改革に至るまで,これまで広く教授学において議論がなされてきた。その際の議論の視角は,学校と生活とをどのようにして結び付けるのか,という点にあった。しかしそうした教授学的な問題設定に対して異を唱えたのがプランゲ(Prange, K.)である。彼は,学校と生活の間の差異を埋め難きものとして強調するのみならず,さらには両者の分離から学校教授を捉え直すことを試みた。

 それでは,プランゲは学校と生活の分離を前提として,どのような学校教授構想を展開したのか。こうした問いを起点とする本稿の目的は,プランゲの学校教授構想を明らかにすることを通して,学校と生活の統合の困難性を浮き彫りにすると同時に,両者の分離を前提とした学校教授の在り方を提示することである。

 プランゲは近代社会の「偶発性」を根拠として学校と生活の間の断絶を指摘し,この偶発性から学校の役割の変動を描き出している。彼によれば近代社会における学校と生活の媒介は「反省的学習」の促しという迂回路の経由によって可能になるという。このようにプランゲの学校教授構想の独自性は,学校と生活の間の統合ではなく,むしろ両者の差異を十全に生かそうとする点に認められる。

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