教育方法学研究
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原著論文
フンボルトの一般陶冶論の教授学的再構成
「学問的な見方」の固有性と相互関連性に着目して
宮本 勇一
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2018 年 43 巻 p. 95-106

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抄録

ヴィルヘルム・フォン・フンボルトの一般陶冶論で提示される言語・数学・歴史・体育・芸術の5つの教授は,今日,学問に裏打ちされた固有な世界の見方を教授するものとして理解されている,しかしフンボルトの原典に立ち返ると,フンボルトは5つの教授を通して固有な世界理解の形式を教授することと同時に,5つの見方を相互に関連させあいながら世界を捉えることが重要であると捉えていた。「学問的な見方」の固有性だけでなく,相互関連性にも着目することで,フンボルトの一般陶冶論は,生徒に世界理解の深い洞察を可能にしながら,同時に多様な世界理解の諸形式へと開いていく可能性を持っている。そこで本研究では,「学問的な見方」の固有性と相互関連性に着目して,フンボルトの一般的人間陶冶を,子どもを「学問自体の最も深く最も純粋な見方」へと導きいれる教授原理へと再構成し,その特質と教授学的意義を展望することを目的とする。新しく構成されたフンボルトの一般陶冶論は,専門分化が極度に進行した今日の学問観を問い直し,学校の教育内容の選択原理にとどまらず,いかに生徒の陶冶過程における自己・世界理解を促すことができるのか,という方法的視点を開くことを可能としている。

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