本稿では,板倉聖宣の所論をもとに,仮説実験授業における経験主義と系統主義の関係性について検討した。①板倉による経験主義批判は,生活単元学習という教育方法と,理科教育におけるマッハ主義に向けられていた。②マッハ主義を超えるために,板倉は,児童生徒の生活経験を問題として,「常識的直観」と「科学の論理」を「対立」させようと考えていた。③彼が経験主義の理念として理解した“子ども中心”による教育内容の民主化は,こうした「対立」による「授業運営法」によって実現することになった。④板倉は経験主義批判を展開したが,その理念は好意的に評価していたので,仮説実験授業のなかでは,児童生徒の生活経験が重要なタームとして理解されていた。その意味で,⑤仮説実験授業は,経験主義と系統主義の「統一」という側面を持って誕生した。本稿の論究から以上の論点が明らかとなった。