物性若手夏の学校テキスト
Online ISSN : 2758-2159
第68回物性若手夏の学校
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対称性で開拓する物性 -らせん磁性・スキルミオン・ホール効果-
*車地 崇
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p. 147-161

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抄録
物性物理の対象となる物質は組成や結晶構造、そこから生み出される物性が多種多様である。物質の詳細に立ち入らずに特異な物性の発現を決定づける要因を探し当てる有力なアプローチが、本ノートの主題となる対称性の観点である。強磁性・強誘電性を代表例とする時空間反転対称性に基づいた物質の分類からはじめ、その適用例としてらせん磁性体・マルチフェロイクス・磁気スキルミオンなどを取り上げ、近年の物性物理のトピックを理解するための基礎概念をまとめた。まず物質を対称性に関して 8 種類に分類する方法を紹介し、これをもとに物質の対称性と応答との関係を議論する。つぎに磁気モーメントの長周期構造が空間反転対称性を破る例としてらせん磁性体について紹介する。そして対称性の破れとマルチフェロイック物性との密接な関係を解説する。また磁気スキルミオンというスピンの渦巻き構造をとるトポロジカルな磁性体を概観し、多彩なスピン構造をもたらす対称性の原理を見ていく。スキルミオンをはじめとした特異な磁気構造を検知する手法として電気・熱ホール効果測定を議論する。最後にケーススタディとして著者が実際に新規物質を探索した際の対称性の観点の扱い方、候補物質の設計手順について紹介する。
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© 2024 車地 崇
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