物性若手夏の学校テキスト
Online ISSN : 2758-2159
第68回物性若手夏の学校
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非晶質固体系の物理学入門
*川﨑 猛史
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p. 184-192

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抄録
非晶質固体とは,液体のように粒子構造が乱れたままダイナミクスが凍結した広義の固体と定義される.その中で,原子・分子・コロイドなど,熱運動する粒子系における非晶質固体を(構造)ガラスという.液体からガラスへの状態遷移であるガラス転移現象は,一見顕著な構造変化がみられないのにも関わらず,急激な緩和のスローダウンが観測されるもので,その転移機構は明らかとされていない.非晶質固体は必ずしも熱的な系にとどまらず,非熱的な粉体系や自己駆動する細胞集団系などもその部類に当てはまる.このような系においては,ガラス転移と類似したジャミング転移と呼ばれる非平衡相転移現象が広く観測される.ガラス転移とジャミング転移は混同されることが多かったが,現在では質的に異なるものであることが明らかとなっている.加えて,これらの系に大変形を加えると降伏が起こり粒子が流動するようになる.ここでは粒子軌道の可逆性や応力などミクロ・マクロな量に,相転移としての振る舞いが観測され,非晶質固体の性質を理解する上で重要である.このように,非晶質固体系には,ガラス転移,ジャミング転移,降伏転移,可逆・不可逆転移といった【転移】の名を冠した現象が多く存在し,物理学の観点から研究が活発に行われていることが分かる.本集中ゼミでは,非晶質固体研究に必要な液体論や非平衡統計力学の基礎を導入し,その後,近年の研究の進展について整理・概観する.
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© 2024 川﨑 猛史
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