抄録
海風による顕熱・潜熱の輸送メカニズムを解明することは、海風の冷却効果を都市内で有効利用する上で重要である。まず、ドップラーライダーを用いた計測により海風の特徴的な気流性状を抽出し、海風の定性的な特徴を把握した。その上で、WRFの結果に基づいた顕熱・潜熱収支分析を行い、移流により地表付近において海から内陸にかけて気温低減および湿度上昇が進行することが確認された。また、海風の前線部においては、移流及び乱流拡散により供給された顕熱が、主に強い移流の効果で上空約800mへと鉛直上向きに輸送されて上空大気が加熱されることが分かった。さらに、前線部の鉛直上向きの移流により、潜熱が上空へと流出して上空の空気を加湿することが分かった。