セルオートマトンによる球面上でのシミュレーションを目的に,球面にセルを配置する方法について検討し,実際に,メダカ初期発生卵の律動性収縮運動のシミュレーションに応用した.セルオートマトンによるシミュレーションの実現には,セルをできるだけ均等に配置することが必要であるが,球面上を均等にセルで覆う方法は単純ではない.ランダムにセルの位置を生成しボロノイ多角形により位置の最適化を図る方法の他,正多面体をもとにして幾何学的に整然とセルを配置する方法を検討した.メダカ卵の実例では,発生段階ごとの卵の極性(細胞の分布部位の偏りや球面上の胚体の位置など)を容易に再現するために幾何学的なセル配置を採用し,表面波の発生源がリズムのペースメーカーとして働くことなどの条件の下に,初期発生の各段階における波面伝搬をモデル化した.このモデルにより,発生が進んだ段階では収縮波が2点で発生し胚体の位置にも影響を受ける複雑な収縮運動の表面波の伝搬を再現することができた.この事例を通して,球面セルオートマトンの実現と応用の可能性について考察する.