名古屋文理大学紀要
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Filling-inの起こりやすさの時空間周波数解析
山中 立子横田 正恵
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2003 年 3 巻 p. 77-86

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抄録

網膜に入力する光と異なる視知覚が生じる錯視の一例にfilling-inがある.錯視が起こる原因として,視覚神経系での視覚情報の獲得,情報の表現,伝送,処理のプロセスで,『入力光と異なるように知覚された方が都合がよい』ことがあると考えられることから,filling-inの特性を調べ発生機構を解明することは,視覚神経系の情報処理メカニズムを理解することにつながるはずである.視覚情報は時空間周波数が異なるいくつかのチャネルに分かれて伝送・処理されるマルチチャネル理論が提案されており,各チャネルの時空間周波数に対するコントラスト感度が推定されているが,filling-inが発生する際の時空間周波数の影響に関しては,これまで,ほとんど議論されていない.本研究では,はじめに制限された時空間周波数のみを通すチャネルを仮定する.仮定した各チャネルを通る視覚刺激の一例として,(時間),空間周波数ともに帯域制限された画像列を作成する.この画像列を呈示した際,filling-inが発生するまでの時間を心理実験から測定した.次に,複数のチャネルにおよぶ広帯域な周波数を含む画像列を作成し,filling-inが発生するまでの時間を計測した.心理実験による結果を用いて,チャネルのfilling-inが発生するまでの時間を,(時間),空間周波数,filling-inさせる対象の大きさ,視覚のコントラスト感度を用いてモデル化した.そして,複数のチャネルにおよぶ広帯域な時空間周波数を含む画像列を呈示した際のfilling-in時間を,複数のチャネルのうち最も早くfilling-inを起こしたもののfilling-in時間としてモデル化したところ,心理実験により計測された結果の特徴を表現できることを示した.

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© 2003 名古屋文理大学
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