名古屋文理大学紀要
Online ISSN : 2433-5517
Print ISSN : 1346-1982
金融消費者主権の実態
関川 靖
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2005 年 5 巻 p. 37-46

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抄録

1990年代は,金融自由化の終焉を迎え自由競争の弊害と長期不況の影響により金融構造が脆弱化し,金融市場において消費者被害をもたらした時代でもある.本論文では,この問題を考察するに当たり,最初に金融消費者主権の定義づけを行ない,従来の消費者主権と金融消費者主権の差異を明らかにする.そして次に,金融消費者主権の侵害要因である「政策の失敗」と「市場の失敗」を分析する.前者は,1990年代の銀行経営悪化に対する金融当局によるセーフティーネット策が,結果としてさらに金融構造を脆弱なものにし金融消費者に大きな負担を課すことになった.一方,後者はいわゆる自由競争の結果,金融サービスを受けられない人々が発生するという問題であり,既にイギリスやアメリカでも金融排除問題として発生している.本論文では,上記の要因を明らかにするとともに,我国の金融市場の現状と合わせて分析を行ない,我国におけるこの問題の発生可能性を考察した.

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© 2005 名古屋文理大学
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