名古屋文理短期大学紀要
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青年期における個室の心理的意義に関する研究
小俣 謙二
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1995 年 20 巻 p. 11-18

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抄録

子供の個室保有の心理学的意義については従来多くの議論がなされているものの, それを裏づける実証的データが少ないという問題点がある.とくに情緒的に不安定で自立性確立という発達課題をもつ青年期では個室保有の心理的意義は大きいと思われるが, この時期についての研究もわずかしかなく, しかもそれには問題点が含まれている.したがって青年期の個室保有が自室の使い方, 心理的自立性の確立にどのような影響をもつかを検討することは, 住まいにおける個室の機能の理解にとって有効な資料を提供するものと思われる.本研究はこのような視点から大学・短大の1・2年生を対象に調査をおこなった.その結果, 以下の所見が得られた.1)この時期多くの青年は専用個室を保有しており, 共有室をもつのは約1割にすぎない.2)個室保有群は部屋の使用が多く, 3)とくに「勉強」「友人の宿泊」「一人になる」といった場面での自室使用が多い.他方4)男女差もあり, 男子では「悲しい時」などプライベートな場面での使用が個室保有群で多かったのに対して, 女子では「友人と遊ぶ」といった社交的場面で個室保有群の自室使用が多かった.また, 5)個室の有無は部屋の排他性には関係なかったが, 自室への愛着や自己表出度は個室保有群の方が高かった.さらに6)心理的自立性は個室保有群の方が高かった.以上, 青年期においても個室を保有することはその日常生活, 心理的発達に大きな影響を及ぼすことが示された.

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© 1995 名古屋文理大学
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