名古屋文理短期大学紀要
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不能犯論と構成要件該当性・違法性に関する一考察
山内 憲
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1995 年 20 巻 p. 27-34

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抄録

不能犯学説は, 未だ統一的見解を見ない状況である.しかし, だからといって無視するわけにもいかない.そこには可罰的な未遂(未遂犯)となるか, それとも不可罰的な未遂(不能犯)となるかといった可罰性の限界の問題があるからである.そこでまず前段において今日いわれている具体的解決方法である諸学説を述べるとともに, その欠点を挙げ, 検討を試みることとする.主観説といわれる純主観説・主観的危険説, 客観説といわれる客観的危険説(絶対的不能・相対的不能説)・具体的危険説などを論証する.そして, 前述の各学説と構成要件該当性の問題について検討する.ここでは, 構成要件自体の性格に立ちかえり, 学説との検討を行い私見として具体的危険説が犯罪成立のための第一条件である構成要件該当性に適していることを述べる.後段において, 構成要件該当性と違法性の関係について考察するとともに, 可罰的未遂か不可罰的未遂かの限界の確定は, 構成要件該当性といったことから離れた, 実質的違法によって判断されることを正当と考え, 不能犯の最終的判断が, 実質的違法の分野であることを述べる.

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© 1995 名古屋文理大学
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