多くの日本企業は, 経営グローバル化の進展によって, 製造機能を次々に海外へ移転していく.しかし, 研究開発にいたっては, 親会社のある日本国内に集中して行なうのがほとんどである.研究開発費については, 大半の企業はその全額を親会社が負担し, 海外子会社に負担させない.このような事態が長く続くと, 研究開発費の回収不足の問題が生じ, 将来の研究開発のために必要な資金を確保できないことも予想される.また, 研究開発費を含めた本社費の海外子会社への配賦については, 子会社の自律性の確立や子会社に対する正確な業績評価などにおいても重要であるし, 本国や子会社所在国における移転価格税制に関連する問題でもある.本稿は研究開発費の海外子会社への配賦, その配賦基準や国際移転価格税制との調和などについて議論する.