1997 年 22 巻 p. 29-35
青年期における自己概念の形成を, 自己同一性の主要な一側面である職業的同一性(occupational identity, vocational identity)の確立過程と関連させて検討する試みを継続してきている.前稿(山田, 1996)では, まずその手始めとして, 西平(1970)による「自己同一性」調査項目表を適用して, 「自分自身の特性」と「看護婦に必要と思われる特性」を5段階評定させた結果に因子分析を行い, 看護学生としての職業的同一性を構成すると思われる8つの基本因子とこれらの因子にかかわる21項目を抽出した.本稿では, これら21項目への評定結果に基づいて設定した, 職業的同一性の確立の程度を異にする3群での, 20答法における自己記述の特徴について比較検討を行なった.その結果, 職業的同一性の確立の程度が高い群では, 職業的同一性の確立に直接かかわるような自己および積極的な自己のあり方について記述する傾向が強いのに対して, 職業的同一性の確立の程度が低い群では, 自己の内面的特性および消極的な自己のあり方について記述する傾向が強いなど, 興味ある知見を得ることができた.