名古屋文理短期大学紀要
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林遠里法の選択的受容 : 愛知県の場合
伴野 泰弘
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1997 年 22 巻 p. 109-115

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抄録

明治20年前後, 全国的に評判を博した<林遠里と勧農社>をめぐって, 最近研究の進展している分野が2つある.第1は, 遠里と勧農社をそれ自体として深く掘り下げるものである.第2は, 遠里や勧農社派遣教師たちが全国各地へ出向いて, 実地に指導したことがそれぞれの地域でどの程度受容されたかの解明である.本稿は, この第2の系列に属する.本稿では, 愛知県において, 遠里の農法と一口でいってもさまざまな要素が含まれており, 教師に接する地元ではそれらの諸要素を取捨選択し, 地元の条件に適合した形で受容していることを明らかにしようとした.近世農法と明治農法との継承性と断絶性という観点から, 遠里の農法のうち受容されたものとされなかったものと整理すると, 対照的な傾向を検出できる.①肥培法における基本的継承性と部分的断絶性.②牛馬耕という革新的技術における基本的断絶性と部分的継承性.その導入普及に基本的には成功しなかった.それが可能であり, またある程度成功したのは部分的限界的な地域と階層にとどまる.

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© 1997 名古屋文理大学
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