名古屋文理短期大学紀要
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児童虐待の防止等に関する法律の改正に当たっての提言
小林 成隆
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2003 年 27 巻 p. 5-12

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抄録

児童虐待の防止等に関する法律は,平成12年11月20日から施行されたが,施行後3年を目途として検討が加えられ,必要な措置が講じられるとされている。そこで本稿ではこの改正を行う際に考慮すべき留意点をいくつか提言することを目的とする。少子高齢社会の進行しているわが国においては,家庭における高齢者介護能力と子育て能力とが著しく低下し,介護と子育てとが重要な問題になってきた。そのうち児童虐待は,子育て機能の低下した一般家庭において,保護者が児童を養育する過程で生じる子育ての困難性に基づく育児トラブルをその本質としている。したがって児童虐待は,ごく普通の一般家庭における子育ての困難さの中から日常的に起こりうることがらであるといえよう。この故に児童虐待防止のためには,虐待発生後の児童に対応することを主とした現行施策から,児童と保護者をともに対象として予防及び治療を行う方向に施策を転換することによって子育て支援を強化し,児童虐待の発生しない家庭をつくることが必要である。本論文はそのために必要な法律改正に当たっての提言と具体的な施策として社会保険方式による「子育て保険(仮称)」の創設を提唱する。この新しい子育て支援の制度によって子育ての社会化をはかり,児童虐待の防止を図るものである。

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© 2003 名古屋文理大学
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