年金研究
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エルサルバドルの年金制度
―公的年金の賦課方式から積立方式への移行における重い負担―
杉田 健
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2023 年 21 巻 p. 69-101

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抄録

 エルサルバドルは、賦課方式の確定給付型公的年金制度を、世界銀行と米州開発銀行の助言に基づいて、軍人を除いて個人年金貯蓄口座に基づく積立方式の確定拠出型制度に 1998年に移行した。しかし、旧制度の受給者への支給負担が重く、2006年に新制度に蓄積された資金を旧制度の給付等に使用するために年金債務信託基金を創設し、さらに 2017年には集合勘定を導入して拠出金の一部を直接旧制度へ注入できる仕組みとした。

 すなわち現役世代からの拠出金の多くを年金受給者に回す制度になっており、実質的に賦課方式のキャッシュフローに近づいているといえる。202212月には年金制度改革を行って拠出金率を引き上げたが、適用率の低さ、所得代替率の低さ、制度の持続可能性の問題は先送りされている。

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© 杉田 健
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