年報政治学
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《特集》
争点を束ねれば 「イデオロギー」 になる?
―サーベイ実験とテキスト分析の融合を通じて
秦 正樹Song Jaehyun
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2020 年 71 巻 1 号 p. 1_58-1_81

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抄録

本稿では、有権者が各政党のイデオロギー位置を認識 (推論) する際に、⑴ 各政党を代表する政策情報は、当該政党のイデオロギー位置の推論に役立つか、また ⑵ 各政党を代表する政策情報はイデオロギー位置を決定する際にどのような役割を果たしているのかについて、サーベイ実験とテキスト分析を組み合わせて検討する。具体的には、サーベイ実験の回答方法を従来的なnumericの場合と、自由回答にした場合の結果を計量的に比較することで、上記の課題に応える。分析の結果、政党の 「看板政策」 の存在が他の政策の重みを低下させたり、判断を歪ませたりすることによって、争点態度の集合とイデオロギーが一致しないことが明らかになった。たとえば、護憲と道徳教育を同時に掲げる政党に対して有権者は、本来 “左派” ではないはずの 「道徳教育政策」 の解釈を変え、当該政党を 「左派政党」 と認識させるのである。本稿の知見は争点投票における有権者の認知プロセスの重要性を再確認させただけでなく、政党のイデオロギーに反する政策を掲げる政党がいかに支持率を維持してきたかというパズルに対する一つの答えを提供する。

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