熱帯農業研究
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原著論文
マンゴー軸腐病および炭疽病の同時防除のための数種有効殺菌剤を用いた体系散布技術の確立
澤岻 哲也安次 富厚新崎 千江美大城 篤田場 聡
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2018 年 11 巻 2 号 p. 43-52

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抄録

マンゴー軸腐病および炭疽病に有効な薬剤による共通防除体系の確立を目的に,病原菌に対する登録薬剤の感受性とマンゴー生育期における数種薬剤を組み合わせた体系散布の防除効果について検討した.軸腐病菌Lasiodiplodia theobromaeおよび2種炭疽病菌Colletotrichum siamenseC. fioriniaeの分生子発芽および菌糸伸長に対する10種登録薬剤の感受性を調べた結果,マンゼブ水和剤,アゾキシストロビンフロアブル,クレソキシムメチルドライフロアブル,塩基性硫酸銅水和剤,キャプタン水和剤の5薬剤で高い抑制効果が認められた.一方,メパニピリムフロアブル,イミノクタジンアルベシル酸塩水和剤,トリフルミゾール水和剤では軸腐病菌に対して抑制作用は認められず,イプロジオン水和剤,メパニピリムフロアブル,トリフルミゾール水和剤およびイミノクタジンアルベシル酸塩水和剤では,2種炭疽病菌の分生子発芽において菌種間で著しい感受性の差異が認められた.2012~2014年に出蕾期または開花期から収穫前(袋かけ前)にかけて,in vitroで各病原菌に高い抗菌活性を示した5薬剤を組み合わせた体系散布を2圃場で実施したところ,いずれの年においても両病害の収穫後の果実において,安定した防除効果が認められた.また,体系散布による果実の薬害は,2013年試験において3.2%の発生がみられたが,2012年と2014年には認められなかった.3ヵ年5試験事例のメタ・アナリシス解析では,体系散布区の両病害の発生は無散布区に比べて有意に減少し,軸腐病では無散布区の発病率の約24%,炭疽病では無散布区の発病率の約23%にまで抑制された.以上の結果より,本体系散布はマンゴー軸腐病および炭疽病の防除法として有効であると考えられた.

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© 2018 日本熱帯農業学会
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