2020 年 13 巻 1 号 p. 20-26
サトウキビは台風や低生産性土壌などの不良環境下で栽培されており,単一品種ではなく生態型の異なる多様な品種を栽培することが気象災害や病害蔓延に対するリスクを軽減し,安定的な生産が実現されると考えられている.その重要性は育種創成期以来強く意識されてきたが,品種数と構成割合の両方を加味した多様性の定量的評価はなされておらず,最適な品種構成に関する議論は進んでいない.本研究では,生態学的手法を用いて,サトウキビ品種の普及状況から品種多様性を定量評価し,品種多様性の現状と改善方針について議論した.その結果,南西諸島における品種多様性は,行政的なポリシーや生産サイドの嗜好性の違いから鹿児島県と沖縄県,沖縄県の分蜜糖地域と含蜜糖地域では異なっていた.多様性増幅に関し,鹿児島県や沖縄県含蜜糖地域では品種数よりも均等度の貢献が大きく,沖縄県分蜜糖地域では均等度よりも品種数の貢献が大きいことが示された.ただし,沖縄県分蜜糖地域では品種数を増加させても,各地域で似通った構成となる傾向が示されたため,普及面での課題があると考えられる.品種数の増加による多様性増幅には限界があるため,均等度すなわち品種構成を管理する体制(品種増殖の調整,適地適品種の普及啓蒙など)の確立が行政的立場から求められる.