温帯気候に属する愛知県東三河南部におけるサトウキビ生産の可能性を探るため,農林8号(NiF8)の栽培試験を行い,収量特性および生育特性を調査・分析した.4年間の単収は春植5.0~5.5t・10a-1,株出7.0~8.0 t・10a-1,同甘蔗糖度は春植12.2~14.9%,株出13.2~15.9%を示した.甘蔗糖度は12月下旬まで上昇し,12月下旬~1月初旬の間に最大値を示し,その後,低温や霜の影響で低下する傾向が見られた.なお,収穫したサトウキビから黒糖を生産することができた.仮茎長の伸長速度は,7月中旬~9月上旬において顕著に高く,この期間は沖縄島より高い値を示した.植付け時期を変えた試験では,茎長は3月植が最も長くなり,4月植は僅差で,5月植以降は順次低下した.東三河では3月下旬~4月下旬が植付の適期と言える.収穫は糖度が低下する前の12月が適期と考える.天水栽培では仮茎長の伸長に降水量が影響し,7月末~9月における降雨後の伸長速度は一旦増加して30 mm d-1 以上の値を示す場合も見られた.その後,晴天が続くと日ごとに減少し,0~1 mm d-1となる場合もあり,灌水の重要性を確認できた.作型による収量の比較から,2回株出までは春植より高い結果が得られ,株出栽培の有利性が示された.
本研究を通して,東三河南部におけるサトウキビの生育特性や植付および収穫の適期を明らかにした.東三河南部のサトウキビ生産は十分に可能であると判断する.