沖縄の主要農作物であるサトウキビの収量は,水資源の脆弱さで不安定である.蒸発散量からサトウキビ収量を予測することは有益である.本報では,沖縄本島南部の異なる栽培時期を設定した新植と株出し栽培において,土壌水分量の変化を考慮した日射法を組み込んだ改良タンクモデルを用いて蒸発散量を推定した.さらに,同モデルを用いて求めた推定積算蒸発散量(ΣETe) と地上部乾物重(DW) の関係を検討した.ΣETeとDWの関係は,新植ではロジスティック曲線,株出しでは直線で近似することができ,有意な正の相関関係(新植,r=0.99; 株出し,r=0.99) が認められた.株出しにおけるDWの生育初期の推移は,新植と比較して急激であった.これは,株出しは新植と比較して出芽が速く,生育初期のLAIが高いことが影響したものと推察される.以上より,本モデルで推定したΣETeからDWを推定できることが明らかとなった.また,両者の関係は収量予測に加え,効率的な灌漑方法に応用できるため,限りある水資源の有効利用に寄与すると期待される.