熱帯農業研究
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原著論文
ロジスティック曲線解析法に基づいたサトウキビの収量予測モデルの可能性
比屋根 真一野瀬 昭博伊禮 信寶川 拓生平良 英三鄭 紹輝上野 正実川満 芳信
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2022 年 15 巻 2 号 p. 101-109

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抄録

沖縄県農業研究センターで長期間実施された気象感応試験における調査データを活用して,サトウキビ収量予測モデルの開発を検討した.サトウキビの仮茎長はロジスティック曲線的に変化することを確認し,栽培型毎の変曲点出現時期を導き出し,その近傍の生育データに基づいて最終収量の早期予測を試みた.平年的な仮茎長のロジスティック曲線の変曲点は,春植え灌水区で植付け後144日目,同無灌水区で153日目,株出しは両処理区ともに株出し開始134日目に出現した.夏植えは,植付けから220日までと,それから収穫日までの2つのロジスティック曲線に分離でき,前者の変曲点は植付け後87日目,後者のそれは293日目に現れた.10月以降の原料茎重の実測値にフィットさせたロジスティック曲線の変曲点は,春植えでは両処理区ともに植付け後177日目,株出し灌水区で139日目,同無灌水区で154日目,夏植え灌水区で346日目,無灌水区で296日目に出現した.これらの変曲点出現時期に近い生育データの内,春植えでは9 ・ 10月,株出しでは8 ・ 9月,夏植え無灌水区では6 ~ 8月における3形質の積(仮茎長×茎径×茎数) と収穫時の原料茎重との単相関係数が有意に高かった.一方,夏植え灌水区の原料茎重は6 ・ 7月の仮茎体積との単相関係数が有意に高かった.以上より,ロジスティック曲線に基づく変曲点の出現時期付近の生育データを用いることによって最終収量の早期予測の可能性がある.

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© 2022 日本熱帯農業学会
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