抄録
ナンヨウアブラギリの発芽過程および発芽に影響を及ぼすと考えられる種子形態の特徴と温度要因を明らかにすることを目的として種子の形態の観察と発芽試験を行った.種子は楕円形で,長直径,幅および厚さ(平均値±標準偏差)はそれぞれ18.5 ± 0.8 mm,11.4 ± 0.5 mmおよび8.7 ± 0.5mmであった.外種皮を除去したところ,ナンヨウアブラギリ種子の発芽率は除去していない種子に比べて高くなった.簡便で効果的な発芽促進処理方法を明らかにするため,異なる外種皮の物理的処理方法が種子発芽に及ぼす影響を調べたところ,対照区,開裂区および磨傷区は低い発芽率を示した.一方,部分除去区のみ全除去区と差が見られず,他の処理区に比べて高い値を示した.外種皮を除去した種子を用いて異なる温度条件が種子発芽に及ぼす影響を調べたが,発芽率と発芽勢は同様の傾向を示し,30 ℃処理区において最も高かった.以上からナンヨウアブラギリの播種後の出芽率の向上のためには外種皮の部分除去が有効で30℃の温度条件が望ましいと考えられた.