マンゴー炭疽病に有効な薬剤防除体系の確立を目的に,病原菌に対する登録薬剤の感受性および果実肥大期の薬剤散布による防除効果と薬害の有無を評価するとともに,数種薬剤を組み合わせた体系散布の防除効果について検討した.2種炭疽病菌
Colletotrichum gloeosporioidesおよび
C. acutatumの分生子発芽および菌叢生育に対する5種登録薬剤の感受性を調べた結果,マンゼブ水和剤,キャプタン水和剤,クレソキシムメチルドライフロアブルおよびアゾキシストロビンフロアブルの4薬剤で高い抑制効果が認められた.一方,イミノクタジンアルベシル酸塩水和剤では2種菌株間で感受性の差異が認められ,
C. gloeosporioidesに対する分生子発芽抑制は示すが,
C. acutatumに対する発芽抑制はみられなかった.2008年に果実肥大期の薬剤散布による防除試験を行った結果,クレソキシムメチルドライフロアブルおよびアゾキシストロビンフロアブルで防除効果が認められ,収穫5日後の炭疽病の発病率は無散布と比較して約41~54%まで抑制された.また,2薬剤ともに果実の薬害はみられなかった.一方,キャプタン水和剤の防除効果は認められず,果皮には薬液による斑点症状が確認された.2009年と2010年に出蕾前(12月下旬)から収穫前(6月下旬の袋かけ前)にかけて4薬剤を組み合わせた体系散布を2圃場で実施したところ,高い防除効果が認められ,収穫5日後の炭疽病の発病率は無散布と比較して約76~96%まで抑制された.また,体系散布による果実の薬害は認められなかった.2ヵ年4試験事例のメタ・アナリシス解析により,体系散布区の炭疽病の発生は無散布区に比べて有意に減少し,無散布区の発病率の約12%に抑制された.以上の結果より,本体系散布はマンゴー炭疽病の防除法として有効であると考えられる.
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