熱帯農業研究
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6 巻, 2 号
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原著論文
  • -醸造酒の栄養価と摂取量に注目して-
    砂野 唯
    2013 年6 巻2 号 p. 69-74
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    アフリカ農村では,穀物やイモ類から作った主食がカロリー源として大量に摂取されている.穀物やイモ類には,人体の成長と組織の修復に不可欠なタンパク質が少量しか含まれないうえに,タンパク質を構成している必須アミノ酸のバランスが悪く,リジン含量が低い.そのため,多くの人びとはマメ類や肉,魚,または乳製品を材料とする副食を食べることで,これらの栄養素を補っている.しかし,エチオピア南部に暮らすデラシェは,モロコシとトウモロコシから作った醸造酒パルショータ(parshot)を主食としており,それ以外をほとんど口にしない.このような食事習慣は,世界的にも珍しい.そこで,本研究では,彼らの栄養事情を解明し,何故,このような飲酒文化がこの地で生まれたのかを考察した.モロコシとトウモロコシ,デラシェで飲まれる3種類の醸造酒の栄養価を分析したところ,3種類の醸造酒の方が高いアミノ酸スコアを示した.また,現地での観察によると,人びとは普段はパルショータを,乾期にはその他の2種類の醸造酒を主食として,毎日大量に飲んでいた.人びとは,モロコシとトウモロコシをアルコール発酵させることで栄養価を高めるとともに,固形食よりも満腹になりにくい濁酒状にして摂取量を増やしていた.人びとは1日に飲む醸造酒から生存に必要なカロリーと栄養を全て満たしており,栄養価に優れたパルショータを普段から主食としていた.多くのアフリカ農村では,マメ類を栽培したり,生業を多様化することによって栄養事情の改善を図っているが,デラシェ地域では単一の作物から効率良く栄養を摂取するために調理方法と摂取方法を工夫している.その結果,地域に特有の飲酒文化が生まれたことが明らかになった.
  • 志水 勝好, 森田 あす美, Sayed Ahmed SAFINA
    2013 年6 巻2 号 p. 75-80
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    ナンヨウアブラギリの発芽過程および発芽に影響を及ぼすと考えられる種子形態の特徴と温度要因を明らかにすることを目的として種子の形態の観察と発芽試験を行った.種子は楕円形で,長直径,幅および厚さ(平均値±標準偏差)はそれぞれ18.5 ± 0.8 mm,11.4 ± 0.5 mmおよび8.7 ± 0.5mmであった.外種皮を除去したところ,ナンヨウアブラギリ種子の発芽率は除去していない種子に比べて高くなった.簡便で効果的な発芽促進処理方法を明らかにするため,異なる外種皮の物理的処理方法が種子発芽に及ぼす影響を調べたところ,対照区,開裂区および磨傷区は低い発芽率を示した.一方,部分除去区のみ全除去区と差が見られず,他の処理区に比べて高い値を示した.外種皮を除去した種子を用いて異なる温度条件が種子発芽に及ぼす影響を調べたが,発芽率と発芽勢は同様の傾向を示し,30 ℃処理区において最も高かった.以上からナンヨウアブラギリの播種後の出芽率の向上のためには外種皮の部分除去が有効で30℃の温度条件が望ましいと考えられた.
  • 澤岻 哲也, 田場 聡, 諸見里 善一
    2013 年6 巻2 号 p. 81-88
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/08/04
    ジャーナル フリー
    マンゴー炭疽病に有効な薬剤防除体系の確立を目的に,病原菌に対する登録薬剤の感受性および果実肥大期の薬剤散布による防除効果と薬害の有無を評価するとともに,数種薬剤を組み合わせた体系散布の防除効果について検討した.2種炭疽病菌Colletotrichum gloeosporioidesおよびC. acutatumの分生子発芽および菌叢生育に対する5種登録薬剤の感受性を調べた結果,マンゼブ水和剤,キャプタン水和剤,クレソキシムメチルドライフロアブルおよびアゾキシストロビンフロアブルの4薬剤で高い抑制効果が認められた.一方,イミノクタジンアルベシル酸塩水和剤では2種菌株間で感受性の差異が認められ,C. gloeosporioidesに対する分生子発芽抑制は示すが,C. acutatumに対する発芽抑制はみられなかった.2008年に果実肥大期の薬剤散布による防除試験を行った結果,クレソキシムメチルドライフロアブルおよびアゾキシストロビンフロアブルで防除効果が認められ,収穫5日後の炭疽病の発病率は無散布と比較して約41~54%まで抑制された.また,2薬剤ともに果実の薬害はみられなかった.一方,キャプタン水和剤の防除効果は認められず,果皮には薬液による斑点症状が確認された.2009年と2010年に出蕾前(12月下旬)から収穫前(6月下旬の袋かけ前)にかけて4薬剤を組み合わせた体系散布を2圃場で実施したところ,高い防除効果が認められ,収穫5日後の炭疽病の発病率は無散布と比較して約76~96%まで抑制された.また,体系散布による果実の薬害は認められなかった.2ヵ年4試験事例のメタ・アナリシス解析により,体系散布区の炭疽病の発生は無散布区に比べて有意に減少し,無散布区の発病率の約12%に抑制された.以上の結果より,本体系散布はマンゴー炭疽病の防除法として有効であると考えられる.
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