2018 年 39 巻 5 号 p. 212-218
電気・電子機器に欠かせないプリント配線板はエポキシ樹脂の代表的な用途の一つである。プリント配線板には,火災リスク低減のために難燃性が求められており,一般にテトラブロモビスフェノールA を難燃剤として使用することで達成される。しかし,近年の環境問題への意識の高まりからハロゲンを含む難燃剤の使用が問題視されており,ハロゲンフリー難燃剤が求められている。過去の研究において著者らは,リン酸アミドエステルがエポキシ樹脂の硬化剤として機能し,難燃剤としての利用が期待できることを報告している。本研究ではこのリン酸アミドエステルについて,エポキシ樹脂難燃剤への応用を検討した。その結果,リン酸アミドエステル単独では満足できる難燃性を達成できないが,市販の難燃剤と組合せることで,非常に高い難燃性を発現することを見出した。また,硬化物のTg を向上できることも確認した。難燃化機構について調査したところ,リン酸アミドエステルが炭化層形成促進による断熱効果,併用した難燃剤がラジカルトラップによる燃焼抑制効果それぞれに寄与しており,この二つの効果によって高い難燃性が発現していることが示唆された。