2020 年 41 巻 3 号 p. 100-112
N- アリルマレイミド共重合体と多官能チオール化合物間のチオール- エン反応を利用した熱硬化系の反応追跡ならびに生成物の構造解析と物性評価を行った。まず,エーテルあるいはエステル結合を含む3 種類のチオール架橋剤を用いてトリアリルイソシアヌレートの存在下で熱硬化物を作製した。NMR およびIR スペクトルの解析結果に基づいて各硬化反応系に対してアリル基ならびにメルカプト基の反応率を決定し,硬化反応挙動について考察した。官能基の消失速度ならびに不溶化率に差異が認められたものの,硬化物のネットワーク構造ならびに機械特性に対する架橋剤の構造の影響は小さいことがわかった。また,硬化物はいずれも高い熱安定性を示した。一方,硬化物の耐加水分解性は架橋剤の種類に依存し,エーテル型架橋剤を用いると耐酸性に優れた硬化物が得られることを明らかにした。