2020 年 41 巻 3 号 p. 129-136
分子内にアクリロイル基とマレイミド基を有する二官能性モノマーであるN-(3,4,5,6- テトラヒドロフタルイミド)エチルアクリレート( THPA)の紫外線照射時の反応を,超臨界メタノール分解を組み合わせたマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)により解析した。まず,光開始剤を加えずTHPA を単独で紫外線照射した試料については,マススペクトル上に七量体までの重合生成物が観測され,マレイミドの光二量化反応のみならず,分子間ラジカル反応が進行していることが確認された。さらに,THPA とネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA)とを混合して,光開始剤であるヒドロキシ-2- メチルプロピオフェノン(HMPP)の存在下で紫外線照射を行い硬化した試料を超臨界メタノール分解し,生成物をMALDI-MS により分析した結果,末端にTHPA-単位を含む二種類のアクリル酸メチルオリゴマーが観測された。この観測結果から,HMPP 存在下では,紫外線照射によりHMPP が開裂したラジカルに加え,THPA 骨格上にもラジカルが生成し,両者を開始ラジカルとして紫外線硬化反応が進行していることが示唆された。