2020 年 41 巻 5 号 p. 207-214
3 次元架橋構造を有するネットワークポリマーは,その優れた力学特性,耐熱性,耐薬品性,電気特性から,汎用材料,構造材料,電子材料として工業的に広く利用されているが,高温加熱ができないエレクトロニクス関連分野等では,UV 硬化が利用される。金属の腐食がないことから,光塩基発生反応を利用したアニオンUV 硬化が注目されているが,光塩基発生剤の開発例が少ない上に,光による塩基発生効率が低く,低感度なUV 硬化材料となることが問題となっている。そこで著者らは,高効率で有機強塩基を発生する新規な光塩基発生剤を開発した。さらに,塩基の作用により自己触媒的に分解して新たな塩基を発生する塩基増殖剤も開発した。光塩基発生剤と塩基増殖剤を組み合わせることで,光化学的に発生した塩基をトリガーとする塩基増殖反応が進行するため,光塩基発生反応を増幅することが可能であり,アニオンUV 硬化材料の飛躍的な高感度化が可能になる。本稿では,光塩基発生剤の開発と塩基増殖反応を利用したアニオンUV 硬化材料の高感度化の手法について述べる。