2022 年 43 巻 6 号 p. 262-274
前報21)に続いて,本稿ではイミダゾリウム塩系イオン液体に関する論文を,エポキシ樹脂の硬化機構,および多機能特性を持つエポキシ樹脂硬化剤という観点からレビューした。最も広く受け入れられている硬化機構は,イミダゾリウム塩の脱アルキル化後に生成されるイミダゾール誘導体によるエポキシ樹脂のアニオン重合反応に基づいていて,脱アルキル化の程度は主にアニオン種の性質に依存している。この脱アルキル化に加えて,Nヘテロ環状カルベンの形成がエポキシ樹脂硬化プロセスに関与しているという提案もなされている。イミダゾリウム塩系イオン液体は,強く凝集したCNT の効果的な分散剤にもなり,このイオン液体によって十分に分散された単層CNT は,エポキシ樹脂/CNT 複合材料の導電性パーコレーション閾値を劇的に低下させることが報告されている。地球温暖化防止の一環として,CO2 回収のために検討されているアミン末端イミダゾリウム塩系イオン液体は,エポキシ樹脂の硬化やCNT 表面処理に適用できる可能性がある。