2022 年 43 巻 6 号 p. 253-261
ポリマー材料の力学特性向上を目的として,可逆架橋の導入が盛んに検討されている。可逆架橋を有効に活用するためには,その分子構造だけでなく,ポリマー鎖中の配置制御も重要である。本研究では,水素結合性ジオールの数密度がポリマー鎖に沿って徐々に増加するグラジエント共重合体に対し,末端にジオールが密なブロックを導入することで,グラジエント共重合体の特徴を保持しつつ,力学特性のさらなる向上を目指した。合成されたブロック-グラジエント共重合体は硬質相と軟質相からなる多相構造を形成し,ポリマー鎖両末端に密に含まれるジオールが硬質相に参加することで,半永久的な架橋点として作用した。その結果,室温でゴム状態を発現するとともに,強固なネットワーク構造の存在によって高い靭性と疲労回復性が見られた。短いブロック構造の導入のみにより,力学特性を大幅に改善できることを見出した。