2023 年 44 巻 6 号 p. 266-274
高速通信多層積層板用途向けに開発したビニルシリル基末端ポリフェニレンエーテル(PPE,樹脂名:VS970)と水添スチレン・ブタジエンブロックコポリマー(SEBS)の配合組成物の相分離構造形成メカニズムを検討した。VS-970/SEBS 組成物中に存在している,SEBS のブタジエン由来ブロック(P(E-B)ブロック)の微小な分散体が,硬化過程で凝集して分散相を形成するメカニズムが提案された。一方SEBS中のポリスチレン(PS)ブロックはポリフェニレンエーテル(PPE)相に相溶しながらP(E-B)ブロック分散体の周囲に偏在するため,その含有率は硬化過程のP(E-B)ブロックの凝集挙動に影響を与える。PS 含有率の低いSEBS を使用した場合は硬化の進行に伴いP(E-B)ブロック分散体の凝集が進行し,100 nm サイズの大きな分散相を含むモルホロジーが形成され,その硬化物は低い誘電正接(Df)値を示した。この現象は反応性希釈剤などの添加剤配合系でも確認された。VS-970 を使用した積層板は,現行技術よりも22%低いDf 値(0.0029 @10 GHz)を示すとともに,Tg,半田耐熱性,銅箔ピール強度などの諸特性も実用化に向けた一次要求特性を満たした。