2024 年 45 巻 1 号 p. 44-54
ボロン酸は,水中で様々な生体分子と可逆的な結合性を呈する。糖との結合性から「ボロノレクチン」とも呼ばれる。その結合強度や選択性は合成化学的に可変である。ボロン酸による可逆的な分子認識においては,それ自身の解離状態と同期した顕著な親疎水性変化が付随し,これらを適切に分子デザインすることで,「ネットワークポリマー」の複合的・階層的な環境応答性の付与が可能となる。本稿では,筆者らが展開する「ボロノレクチン」の機能を応用した疾病診断やドラッグデリバリーシステムに関する研究から,特に,細胞内環境応答的な核酸医薬の送達システム,シアル酸認識によるがん診断及び標的治療技術,糖尿病治療を目的としたグルコース応答型インスリン供給システム等について概説する。