ネットワークポリマー論文集
Online ISSN : 2434-2149
Print ISSN : 2433-3786
報文
重合性モノマーの液晶中での重合による自己垂直配向技術および重合性モノマー材料
水﨑 真伸
著者情報
ジャーナル 認証あり

2024 年 45 巻 3 号 p. 124-

詳細
抄録

液晶材料中に垂直配向させることが可能な,アルキル鎖を有する重合性モノマー(垂直配向モノマー)を溶解させた混合物を基板間に注入し,無偏光UV を照射することで垂直配向を発現できることを確認した。垂直配向モノマーについて,Acrylic acid 4’-octyloxy-biphenyl-4-yl ester(AOBE) およびAcrylic acid 4-(4’-octyloxybiphenyl-4-yloxy)-butyl ester(AOBBE) の二種類を検討した。AOBE は,光フリース転移によりラジカルを形成するため,ラジカル形成モノマーの追加は必要なかった。しかしながらUV 照射により,液晶層中に残存するラジカル濃度が増加したため,電圧保持率が低下した。一方AOBBE は,光フリース転移が起こらないためラジカル形成モノマーの追加が必要だった。しかしながら,ラジカル形成モノマーを最適濃度に調整できるため,垂直配向と,高い電圧保持率を維持できることを確認した。これまで行われてきた,基板上に予め配向膜を形成し配向処理を行う方法では,200℃以上の高温処理が必要であり,またシール樹脂との密着性が低く,液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)の狭額縁化を行えなかった。今回提案した,配向膜を形成せずに垂直配向とする手法では,セル作製時に高温処理を行う必要がなく,また配向膜とシール樹脂との低い密着性も避けられるため,LCD のフレキシブル化や狭額縁化が行い易くなると考えらえる。

著者関連情報
© 2024 合成樹脂工業協会
次の記事
feedback
Top