抄録
塗料は数μm から数十μm といった薄い膜で素材を保護し,美観を与え,さらに遮熱,低汚染,などの機能を付与し,それを長期間にわたって維持するということで,環境保護に貢献している製品である。現在多くの塗料は硬化型塗料であり,硬化反応の選択は塗料設計の重要な要素技術の一つである。さらに近年,地球環境保護の観点から揮発性有機化合物(VOC)の排出規制やCO2 を主体とした地球温暖化ガスの排出制限がなされており,塗料においてもその対応が大きな課題となっている。塗料の成膜工程において,VOC やCO2 の多くは乾燥工程で発生するので,この部分の改良が必要である。乾燥工程におけるVOC の削減には溶剤型塗料から水性塗料や粉体塗料への転換が必要であり,それらに適した硬化反応の選択が重要である。また,CO2 削減には低温短時間で硬化する反応系が必要である。本稿では水性塗料や粉体塗料で用いられる硬化系と,低温短時間硬化の重要な手段であるUV 硬化系の紹介を行う。