抄録
天然の芳香族ネットワーク型高分子である天然リグニンから相分離系変換システムにより誘導されたフェノール性リグニン系高分子誘導体リグノフェノール(LP)の分子内/分子間相互作用を解明するためにTHF 溶液中のUV-Vis,蛍光ならびに励起スペクトルによる光化学的挙動の解析を試みた。LP のUV-Vis の吸収波長は紫外部(285nm)が中心であり樹種,フェノール種による差はみられなかったが,蛍光ではスペクトルパターンに差が見られた。高濃度溶液(1.0 gL-1)では消光したが,濃度低下またはアセチル基による水酸基末端修飾により消光が抑制された。LP の励起機構は構造からπ-π*であると推定されるため,これらの結果から,導入フェノールの水素結合による分子会合や相互作用が緩和プロセスに影響を与えていることが見出された。また,蛍光ならびに励起スペクトルから,ヒノキLP(p-cresol type)の285 nm の吸収に対する0-0 遷移は300 nm 付近(4.0 eV 相当)であり,緩和過程に励起エネルギーの内部変換による700nm 付近での発光と100nm 程度の大きなStokes シフトの蛍光が広い波長域で連続的に観測された。これらの結果から,導入フェノールの構造と空間の配置,分子内/間の相互作用と分光の結果が関与していることが明らかになった。