ネットワークポリマー
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解説
ネットワークポリマーとしてのゴム
伊藤 眞義
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2012 年 33 巻 5 号 p. 235-241

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抄録
(フィラー)を混合したポリマーナノコンポジットである。この材料の大きな特徴は,高分子物質を液体状態で使用することであり,これによりゴムの基本特性であるエントロピー弾性を発現させることができる。ゴム材料が液体状態で可逆的な変形を行うためには,変形によって分子鎖同士の相対的位置関係が変化しないようにする必要がある。このため,ゴム材料には分子鎖同士を部分的につなぐ架橋構造が導入され,その構造は硫黄架橋や過酸化物架橋のように化学結合で形成されている場合と,分子鎖の凝集構造制御を利用したハード相(たとえば結晶相)による物理結合で形成される場合がある。フィラーゲル相は,生ゴムとフィラー間の相互作用によって形成される。この相互作用はフィラーと生ゴムの種類に依存する。相互作用が小さい場合,フィラー配合によりゴム材料の弾性率は増加するものの,フィラーゲル相はほとんど形成されず,強度の増加も小さい。相互作用の増加に伴い強度が増加するとともにフィラーゲルが出現する。このことは, フィラーゲルがゴム材料の強度に深く関与していることを示している。フィラーゲルの構造と量は,フィラー種および生ゴムの化学構造と分子量に依存する。ここでは,フィラー種としてカーボンブラックとシリカを取り上げ,これらと種々の生ゴムとの組み合わせで発現するフィラーゲルについて紹介する。
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© 2012 合成樹脂工業協会
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