抄録
高分子量フェノールノボラック樹脂および高分子量オルトクレゾールノボラック樹脂を合成し,高分子量フェノール系樹脂の主鎖の分子骨格の構造解析を行うとともに,分子形態に及ぼす主鎖骨格の影響を検討した結果を紹介した。高分子量ノボラック樹脂の分子構造を13C-NMR 測定およびコンピュータシミュレーション法より解析し,ゲル化における分子内反応およびゲル化前のミクロゲルの生成を示唆した。高分子量フェノールノボラック樹脂および高分子量アセチル化オルトクレゾールノボラック樹脂の分子形態について検討した。高分子量フェノールノボラック樹脂は,分岐状高分子としてふるまうことが分かった。一方,高分子量アセチル化オルトクレゾールノボラック樹脂は,線状高分子の特徴を有しているもののθ溶媒中で収縮した形態をとることが明らかとなった。これは,フェノール系樹脂が,フェノール環とメチレン結合からなる分子骨格に由来した特殊な分子形態をとるためと考えられ,反応性を制御することでフェノール系環状オリゴマーが容易に生成する要因にもなっていることが示された。これらの特徴を生かすことで,新たなフェノール樹脂の機能が発現すると考えられた。