抄録
オリゴマーの平均分子量が同じで分子量分布の異なるエポキシ樹脂を作製し,微細構造および力学特性に及ぼす影響を調べ,これらの関係について検討した。主剤に平均分子量の異なる4 種類のビスフェノールA 型ジグリシジルエーテルを用いてさまざまな配合比で混合し,平均分子量が同じで分子量分布が異なる4 組成のブレンド樹脂を作製した。作製した樹脂について,微細構造観察および力学特性評価を行った。動的粘弾性試験の結果,分子量分布が広くなるほどガラス転移領域が広くなり,材料内部の架橋密度差が大きくなることが分かった。架橋密度差の拡がりとともに不均質構造のサイズも大きくなった。特に,分子量分布がもっとも広い系では,硬化時に反応誘起型相分離が生じたことが分かった。曲げ弾性率,曲げ強度は,分子量分布およびそれに伴う内部構造変化の影響を受けなかったが,破壊靭性値は分子量分布が広くなるにつれて高くなった。微細構造モデルを提案し,そのモデルを用いて破壊靭性向上のメカニズムについて考察した。