抄録
環動ゲルにおける高分子網目は,高分子鎖同士が化学結合する代わりに,8 の字をした環状化合物に2 本の高分子鎖が貫通した構造をしている。そのため,高分子鎖はその架橋点をスライドすることができる。このスライドによって環動ゲルは既存のゲルとは異なる力学物性を示す。また最近では,環動ゲル膜に特異な物質透過挙動が見られ,スライドに起因する網目構造の変化との関係が注目されている。環動ゲルはポリロタキサンと呼ばれるネックレス状の超分子を架橋することで得られるが,2001 年の最初の報告以来,始めの十年間は単一の化学構造を持つポリロタキサンを架橋して得られる環動ゲルについて,その構造や物性の詳細と機能性材料への応用が集中的に研究された。しかし近年,多様な骨格高分子や環状成分,そしてそれぞれの成分比である包接率が異なる多様なポリロタキサンの合成法が開発され,その架橋体である環動ゲルの化学構造も多様化した。本総説では最近発見された環動ゲル特有の粘弾性挙動を概説しながら,環動ゲルの力学物性を制御するためのさまざまな分子設計について紹介する。