2017 年 38 巻 1 号 p. 4-13
リビングラジカル重合(LRP)はラジカル重合において分子量と分子量分布,およびブロック共重合体を通じてモノマー配列を制御する合成法である。1993 年のGeroges らの報告以来,新しい方法の開発と高分子材料への応用が広がってきている。本稿では,LRP の鍵である休止種の活性化に焦点を絞り,最近の二つの進歩について紹介する。一つは,光を用いる休止種の活性化である。これにより,生成ポリマーの構造の制御の向上や,触媒の低減化などが可能になってきている。もう一つは非共役モノマーのLRP である。非共役モノマーの成長末端ラジカルは共役モノマーの末端に比べて不安定であり,休止種の活性化が難しいため,その進展は限られていた。しかし,重合系をうまく選択することで,さまざまな非共役モノマーがLRP に利用できるようになってきている。これらの進展により,LRP の可能性がさらに広がってきている。