2017 年 38 巻 4 号 p. 173-183
ポジ型フォトレジスト材を用いたドライフィルムを作製できるようになれば,新たなニーズの展開が期待できる。著者らは柔軟性をもつレジスト用クレゾール(Cre)ノボラック樹脂の開発を試み,これまでグルタルアルデヒド(Glu)などのアルデヒド成分に着眼し,Cre/Glu ノボラック樹脂のような柔軟性をもつノボラック樹脂を見出してきた。本稿では着眼点をフェノール成分に移し,Cre 類に代わりビスフェノールA(BisA)を用い,分子鎖骨格に嵩高いイソプロピリデン基を導入することで,より高い柔軟性の発現を試みた。架橋剤としてホルムアルデヒド(Form)を用いたBisA/Form ノボラック樹脂の合成は,環流[R],脱水[D],そして環流と脱水の組合せ[R]-[D]の3 種の条件で行った。合成条件の差異による分子構造の変化は,13C-NMR 測定より確認した。BisA 成分の分解を抑えつつ,かつ,Mw の増加とアルカリ水溶液溶解速度(DR)の低下を満足した合成条件は,2 段階法の[R]-[D]であると導いた。[R]-[D]より得た樹脂の中から,DR <1000 Å/sec を満たすものを選出した。これらをポリイミドフィルム上に膜厚5 μm に塗布した試料を折り曲げ,折り曲げ面の樹脂の飛散状態から柔軟性を評価した。BisA/Form ノボラック樹脂の柔軟性は,Cre/Glu ノボラック樹脂をやや上回った。描画性能は,シリコンウェハ上に樹脂を膜厚1.5 μm となるように塗布し,レジストパターンを作成し,評価した。柔軟性が確認された樹脂には,Cre/Form ノボラック樹脂に迫る高い微細描画能を示すものもあった。 特に,95℃[R]-110 ℃[D]より得たBisA/Form ノボラック樹脂は,高い描画能(残膜率:98%,描画能:2.5 μm 以下(線幅≒100%))を示した。