抄録
ジアリルフタレート (DAP) 樹脂の改質に関する基礎研究として, メタクリレート系網目存在下でのDAPの硬化を主として反応面から詳細に検討した。すなわち, メタクリレートがDAPに比べて著しく高反応性であり、かつ両モノマーの共重合性が悪いことに着目して、各種モノメタクリレート、ジメタクリレートおよびDAPの三元共重合を行い, 重合初期に形成されるモノメタクリレートージメタクリレート共重合網目 (第一網目) 存在下でのDAPの硬化過程を追跡した。まず, 最終硬化物の物性測定を行ったところ, 適度の架橋密度を持ち, かつDAP鎖との相溶性の良い第一網目の存在下で引張強度が増大した。次に, この強度の増大について, DAP中でのメタクリレート系第一網目の形成および第一網目存在下でのDAPの重合といった観点から詳細に検討した結果, DAPの重合場が第一網目の存在によって制限を受け, DAPの三次元化過程でのミクロゲル化が抑制され, ミクロゲルサイズの微小化が図られたことによるものと推察した。