ネットワークポリマー
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ジメチレンエーテル結合を有するパラクレゾール樹脂の合成とその溶液物性
山岸 忠明今井 健介大林 純子黒岩 晴信中本 義章石田 真一郎
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1998 年 19 巻 2 号 p. 79-86

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抄録

ジメチレンエーテル結合を有するフェノール系樹脂は, 硬化剤なしで架橋反応が進む, いわゆる自己硬化型樹脂として知られている。今回, ジメチレンエーテル結合を有するパラクレゾール樹脂を合成し, その分子鎖中のジメチレンエーテル結合の割合と溶液物性の関係について系統的に検討した。樹脂は, パラクレゾールのモノメチロールおよびジメチロール化合物を適当量仕込み, 窒素雰囲気減圧下130~150℃に加熱縮合することにより得られた。水酸基を有する樹脂は, ジメチレンエーテル結合の含有率が高いほど溶液中で分子鎖は広がる傾向を示し, 特に, クロロホルム溶液中でこの傾向は顕著であった。一方, 水酸基をアセチル化した樹脂では, いずれの樹脂の分子鎖も広がったコンポメーションをとることがわかった。IR測定より樹脂の水素結合の強さについて検討した結果, ジメチレンエーテル結合の割合が増加するにつれて, 水素結合力が弱まることが確認された。これは, ジメチレンエーテル結合の割合が増えることにより隣接水酸基間の距離が長くなり, その結果水素結合力が弱まるためと考えられた。以上のことより, ジメチレンエーテル結合を有するパラクレゾール樹脂の分子鎖は, 分子内水素結合の影響を強く受けることがわかった。さらに, 非摂動状態において, メチレン結合のみからなるフェノール系樹脂に比べて広がった形態をとることが明らかとなり, ジメチレンエーテル結合を有する分子鎖の骨格自身の性質によっても分子鎖が広がると考えられた。

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