2017 年 33 巻 3 号 p. 167-176
認知症における食行動異常と嗅覚・味覚の生理学的機能との関連についての近年の知見を概説した.嗅覚障害に関してはいくつかの認知症性疾患に合併するという多くの報告がある.アルツハイマー病(AD)とレビー小体型認知症(DLB)ではしばしば著明な嗅覚障害を早期より認めるが,他の認知症性疾患では著明な障害はみられない.一方,味覚についてはいまだ少数の研究しか見あたらず,結果にも相違がみられる.著者らはADの基本4味覚(甘味・塩味・酸味・苦味)の検知・認知閾値を測定し,認知閾値は初期から上昇するが,検知閾値は遅れて上昇することを見出した.また,意味性認知症(SD)に関する予備的研究では,検知・認知閾値ともに初期から上昇した.これらの知見は特に嗜好の変化を呈するADとSDにおいて基礎的な味覚機能が食行動異常の背景にあることを推測させる.