神経心理学
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シンポジウムI コミュニケーション障害の様々
コミュニケーション障害としての読み書き障害
―触覚失認,皮膚書字覚障害,なぞり読み困難に関連して―
櫻井 靖久
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2021 年 37 巻 2 号 p. 81-87

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抄録

読み書きにおけるコミュニケーション障害としてなぞり読み困難と関連する障害に焦点を当てた.両手の連合型触覚失認,両手の皮膚書字覚障害,なぞり読み不能を呈した非対称性Bálint症候群および多様式失認の患者1となぞり読み困難と視覚・触覚共同運動障害を呈した逐字読みを伴う失読失書の患者2を紹介した.患者1は左頭頂葉から後頭・側頭移行部に達する皮質下出血,患者2は角回より下の中・下後頭回の皮質下出血であり,両者とも機能的MRIで視覚呼称,触覚呼称ともに賦活される触覚関連外側後頭皮質(Amediら,Cerebral Cortex, 2002)が損傷部位に含まれていた.両手の連合型触覚失認,両手の皮膚書字覚障害,なぞり読み困難,運動覚性失読,視覚・触覚共同運動障害はまとめて触覚関連認知障害と呼ぶことができ,視覚情報と触覚情報が収束する触覚関連外側後頭皮質へのアクセスの離断かこの領域の損傷そのものによって,出現すると考えられる.

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© 2021 日本神経心理学会
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