自閉スペクトラム症(ASD),注意欠如多動性障害,学習障害などの発達障害でみられるコミュニケーションの問題は,発達障害自体の多様性を反映して,様々な形で現れる.高次脳機能障害とは対照的に,成人発達障害では神経画像上明らかな病巣が見られることはほとんどないが,コミュニケーションの問題を理解するためには神経心理学的なアプローチが有用である.本稿では主にASDの発症機序について,社会的認知の問題に重点をおく説明と,その他の認知機能の問題による説明の大きく2種類の学説について概説し,自験例のASD症例でみられるコミュニケーション障害とその神経心理学的特徴との関連を考察する.