主催: 日本薬理学会次世代の会
会議名: 次世代薬理学セミナー 2025 in 宮崎
回次: 2
開催地: 宮崎
開催日: 2025/11/08
ホタルに代表される発光生物が放つ生物発光は有機小分子の発光基質とタンパク質/酵素による化学反応の結果、生じる。生物発光は、生体内で起こる現象を可視化するバイオイメージング技術として、生命科学研究の現場で汎用される。
本発表では生物発光反応を利用した生命現象のイメージング技術開発に関する取り組みをいくつか報告する。
近赤外光(波長650-900 nm)は、血液中のヘモグロビンの光吸収の影響を避けられることから、生体透過性が高いと考えられており、深部組織の高感度なイメージング実現に必須であると考えられている。発表者はin vivo 生物発光イメージングの高感度化を目指し研究を行ってきた。2018年に報告した人工生物発光システムAkaBLIは、近赤外発光を示す人工発光基質AkaLumineとそれに最適化した人工酵素Akalucから構成される(Iwano et al, Science 2018)。AkaBLIは肺・脳などの深部組織イメージングにおいて、従来技術の100-1000倍もの検出感度を示した。加えて、AkaBLIは標識細胞1個がマウスの肺に捕捉される様子の可視化や非侵襲・自由行動下のコモンマーモセットの脳深部標識神経細胞からの発光シグナルの高速ビデオ撮影を実現した。現在、AkaBLI技術に基づく、生体分子プローブ技術を開発中である。
また、AkaBLIと高い直交性を有する高輝度な新規近赤外生物発光システムも開発を実施した。AkaBLIと新規発光システムの直交する2つの近赤外発光システムにより、異なる2つの細胞種(免疫細胞と腫瘍細胞)の個体内動態の経時的な非侵襲イメージングを達成した(#Moriya-Saito R, #Iwano S et al, bioRxiv)。
同様の開発戦略で新規青色生物発光システム(青基質/青酵素)も開発した。この新規青色生物発光システム(λmax = 450 nm)は、Nanoluc/Furimazine(Promega)と比較し、安定的な発光シグナルを生成し、100倍程度高いシグナル/ノイズ比での計測が可能である。また、青色酵素と各色蛍光タンパク質の融合により、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)による発光波長シフトが誘起されることを見出した。BRETに基づくバイオセンサー分子を新規に開発しており、生物学研究への実装を進めている。