抄録
2012年の当大学人間心理学科の初年次教育としての夏期集中グループ体験学習のプログラムのうち筆者の担当した部分について受講生の記入した振り返り用紙によりそれが学生にとってどのようなものであったのか事後検討された。プログラムは前半の1年生と2年生の二人組の対話による交流と後半の創造力グループワークの部分から構成される。受講生は学年別に大きな二重の円になって対面して着席し、3つの回ごとに右に移動して別の学生と組になった。1年生に与えられた話題は「(1)入学後4か月、今感じていること」「(2)大学近くのあるいは遠くの穴場」「(3)今挑戦していること」、2年生には「(1)この大学・心理について教えてあげたいこと」「(2)一年と同じ」「(3)今はまっていること」であった。 後半のセッションは創造力グループワークと銘打ち、メンバーの課題はカラフルな筒型の1オクターブの音階が出せる子供用遊具の使い方を自由に考え話し合うことである。9グループの受講生がポスターに彼らの出したアイディアを描いた。その後メンバーはグループの全員に対して「○○さんは〜してくれた。〜するともっとよい」というメッセージを書いたステッカーカードを交換した。 受講生がセッション後記入した振り返り用紙の質的分析を行った。その結果から分かったのは、前半部分では対話相手から話に対する関心、興味、励ましを示すフィードバックをもらったこと、後半部分のポスターを見てみると描かれたアイディア群は優れていて印象的であったが、他学生からの肯定的なフィードバックに接し多くの受講生が積極的な発言を良いと思ったことか分かった。またプログラム全体への振り返りからは受講生がセッションを楽しめたこと、何人かの上級生はプログラムの進行を助ける積極的な行動を取ったことが分かり、また自分についての理解を深めるメッセージを受け取ったことを喜んでいた。しかしプログラムの進行や目的の不明確さに対する批判もあった。ファシリテーターも進行中受講生の意見を取り入れたことが結果としてプログラムの改善につながったこともあった。