日本橋学館大学紀要
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教育臨床におけるコミュニケーション分析の試み : 吃音のある子どもと教師の話し合い場面について
長澤 泰子太田 真紀
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2003 年 2 巻 p. 3-13

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抄録

日本において,児童期の吃音指導の多くは公立小学校の通級指導教室(通称ことばの教室)の教師によって行われている。そこでは,子どもに吃音を受け入れさせるために,多くの教師は子どもと吃音の話をして「どもることは悪いことではない」というメッセージを伝える立場をとっている。しかし,吃音のある子ども達は吃音にかかわるつらい経験をしているため,それらの経験について話したがらない。そこで,本研究では吃音について話し合う際の留意点を明らかにするために,吃音のある小学6年生と教師が彼女の吃音について初めて話し合う場面の相互交渉を質的に分析した。分析指標には相互交渉における両者の発言,表情,身体の動きを用いた。結果は次の通りである。1)吃音に対する子どもの気持ちは,ことばより顔の向きや顔の表情と一致していた。教師が吃音のある子どもと話をするとき,教師は子どもの非言語的行動を注意深く見るべきである。2)子どもが教師の質問に対して沈黙したり,「分からない」と答えたとき,教師は子どもがなぜそのように答えたのかを考えていた。質問が難しかったと判断した場合は,より答えやすい聞き方,より具体的な質問をしていた。また,子どもがそれについて話すことを拒否したと判断した場合,教師はそれ以上無理強いせず,別の話題に変えていた。そのような対応によって,子どもは自分の吃音について再び話し始めた。3)子どもが吃音について否定的に話した時,教師がそれに対して「どもってもいいんだよ」という内容の話をしたりせずに,子どもの気持ちをより知ろうという態度でいると,子どもは自分のことをより話していた。吃音の話をするというのは,「どもることは悪いことではない」というメッセージを一方的に伝えることではなく,子どもの吃音のいやな体験や混乱した気持ちを一緒に整理したり,吃音のある暮らしについて話し合うことであることが示唆された。

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© 2003 学校法人日本橋女学館 日本橋学館大学
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