抄録
産後初期の母親に対する「育児支援」を効果的に行うことを念頭に,母親の育児態度とニーズとの関連を探る目的で,質問紙調査を実施した。対象者は,都内S区在住の0-3ヶ月児をもつ母親152名である。うち初産婦は86名,経産婦は66名であった。育児態度とニーズは,それぞれ25設問(すべて5件法の間隔尺度)から測定されているが,得られたデータの圧縮のため探索的因子分析を実施した。「育児態度項目」と「ニーズ項目」とで,それぞれ5因子,6因子が得られた。これらの因子得点をもとに,初産婦と経産婦との比較を行った(t検定)。その結果,初産婦の方が経産婦に比して,育児に対して神経質かつ強迫的になっており,社会的な交流を求める傾向や外部からの育児に関連する情報を求める傾向が強いことがわかった。初産婦にとっては初めての育児であることが,大きく影響しているものと思われる。さらに,育児態度とニーズとの関連を調べるために重回帰分析を行った。とりわけ興味深いのは,「育児解放ニーズ」が生ずるのは,初産婦においては,育児のポジティヴな面が関連していたのに対して,経産婦においてはネガティヴな面が関連していたことである。また,経産婦においては,育児に対してポジティヴであることと「自己実現ニーズ」との間に関連がみられた。概して,初産婦には育児の喜びをもっと知ってもらうという方向での支援が有効であり,経産婦には育児に対する精神的負荷を軽減し得るような支援が,1つの方向性ではないかと要約できるであろう。